フェラーリのデザイナーといえばイタリア人?いや、日本人のデザイナーが存在していたのです。
その方の名前は『奥山清行』氏。
エンツォ・フェラーリを手掛けた巨匠としてご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
フェラーリのデザインとして有名なピニンファリーナ社に在籍されていたので、フェラーリのデザインを手掛けることがあったのです。
今回はフェラーリの日本人デザイナーである奥山清行氏の作品について、ご紹介いたします!
フェラーリの日本人デザイナー『奥山清行』氏の代表作品
①フェラーリ~奥山清行氏がデザインした跳馬~
Ⅰ,『フェラーリ・エンツォフェラーリ』
Ferrari / Enzo Ferrari | |
エンジン | 5,998cc V12 |
ミッション | 6速AT |
最大出力 | 660㎰ / 7,800rpm |
最大トルク | 67.0kgm・f / 5,500rpm |
2002年にフェラーリ創業55周年を記念し発表されたのが、『エンツォ・フェラーリ』です。
創業者の名を冠するモデルであることから、この車がいかにフェラーリにとって特別な位置づけなのかがよく分かります。
合計399台が製造され、日本に正規輸入されたのは33台です。
なぜ399台なのかというと、市場調査をした際に確実にこの車を買う人は400人存在することが判明しました。
その際『需要よりも1台少なく創れ』という創業者の言い伝えに従った結果、399台という生産台数になったのです。
いざ発表すると3000人以上の人が購入を表明したため、オーナーはフェラーリ側で抽選を行います。
エンツォは新車価格は日本円で約7,500円。中古車価格は1億を超えるほどの、まごうことなきハイパーカーです。
奥山清行氏はエンツォについて「特に思い入れがある1台」と語っています。
エンツォのデザインには2年間を費やしていたものの、どうもデザインに納得がいかなかったのです。
10年に一度の限定車のデザインということもあり、攻めたデザインにしたいが攻め切れない。
そんな葛藤に悩まされていました。
2年間を費やしたある日、フェラーリのモンテゼモロ会長がヘリコプターでやってきて、この日に決まらなければプロジェクトはキャンセルになるという大ピンチが訪れます。
車のデザインをみたモンテゼモロ
そこで奥山清行氏の上司はこう言います。
「奥山、15分やるからスタジオ戻って絵を描いてこい、あるだろ例の絵が」
奥山清行氏は、万が一に備えてもう一枚ほどデザインを考えていたのです。
15分の間に絵に色を塗って会長に絵を見せます。
「なんだおまえらできてんじゃねえか」
こうしてエンツォフェラーリは誕生したのです。
万が一の一枚がなければエンツォフェラーリは存在していなかったと奥山清行氏は語ります。
この美しい車が世に出て本当に良かったと思うほど、歴史に残る名車であることは間違いありません。
F1を彷彿とさせるハイノーズ、いさぎよくリアウィングを廃したリア。
10年以上も前に作られた車ですが、全く色褪せることはありません。
Ⅱ,『フェラーリ・456M GT』
Ferrari / 456M | |
エンジン | 5,473cc V12 |
ミッション | 5速MT / 4速AT |
最大出力 | 442㎰ / 6,200rpm |
最大トルク | 56.0kgm・f / 5,500rpm |
1992年に登場したフェラーリ456。
1998年にはマイナーチェンジをし、名称は456Mとなった際にモディファイを手掛けたのが奥山清行氏です。
マイナーチェンジにあたり、ノーズが長く見えるような処理を施しています。
ボンネットの浮き上がる部分の線を極限までリトラクタブルライトまで寄せ、フロントのエンターを尖らせています。
なので456の前期と後期を見分けるポイントは、ボンネットとフロントのセンター部分を注意して見ると違いが判るでしょう。
ちなみに前期型である456はピエロ・カルマッデラ氏がデザインを施しています。
4シーターのフェラーリとして、612スカリエッティに引導を渡します。
612にもロングノーズの面影が引き継がれており、スカリエッティからも456Mの息吹を感じることができます。
今はもう創られることのないリトラクタブルを装備していることは、456の魅力の1つなのではないかと思います。
Ⅲ,『フェラーリ・599GTBフィオラノ』
Ferrari / 599GTB Fiorano | |
エンジン | 5,999cc V12 |
ミッション | 6速MT / 6速AT |
最大出力 | 620㎰ / 7,600rpm |
最大トルク | 62.0kgm・f / 5,600rpm |
2006年に発表されたフェラーリ599GTBフィオラノのデザインを手掛けたのは、実は奥山清行氏ではなく『フランク・ステファンソン氏』です。
奥山清行氏はディレクターとして携わっていました。
排気量が5,999ccであることから599という名前が与えられたモデルであり、812スーパーファストの先祖にあたる車です。
正式名称は599GTBフィオラノなのですが、日本では『599』として売り出されました。
なぜかというと、『GTB』はトヨタ自動車が、『フィオラノ』はオートバックスがすでに商標登録していたためだとWikipediaに書いてあります。
本当なのか怪しいので特許庁のHPで調べてみたところ、トヨタが『GTB』という商標を取得していたことは本当のようです。
1997年に商標登録がなされており、機械や附属品の商標である模様。
しかしながらオートバックスが『フィオラノ』を商標登録した痕跡は見つかりませんでした。
商標の期限が既に切れているという可能性がありますし、嘘っぱちという可能性もあります。
当時の法制度は分かりませんが、トヨタは車としての商標で『GTB』を使っていたわけではないので、手続きを踏めばGTBの名を冠することができたのではないでしょうか。
実際商標登録が関係しているのかは怪しいところですね。
話が逸れてしまいましたが、先代の575Mマラネロと打って変わり曲線を多用したスタイリングは、多くの人を驚かせました。
当時は受け入れられない人も多かったかと思いますが、慣れてくると美しく見えてくるものですね。
だからといって過去のフェラーリの価値が色褪せることはありません。
Ⅳ,『フェラーリ・カリフォルニア』
Ferrari / California | |
エンジン | 4,297cc V8 |
ミッション | 6速MT/7速DCT |
最大出力 | 460㎰ / 7,750rpm ※後期は490ps |
最大トルク | 50.5kgm・f / 5,500rpm |
デザインは奥山清行氏監修の下で手掛けられており、丸みを帯びたデザインは2000年代後半のフェラーリの時代性を表しています。
なぜイタリアの車なのに『カリフォルニア』という名前なのか。
これは、1950年代に製造されていた『250GTスパイダーカリフォルニア』というフェラーリから来ています。
カリフォルニアはFRレイアウトで初めてV8エンジンを搭載したフェラーリとして登場し、フェラーリに新たな風を吹かせた風雲児でもあります。
FRのフェラーリといえばV12という風潮でしたから、大艦巨砲主義とも言えるV12愛好者の中にはカリフォルニアの登場を喜べなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
カリフォルニアは開発に当たり、3分の1のモデルを使って1,000時間以上もの風洞実験の末に出来上がった車です。
極限まで空力を計算して生み出されたカリフォルニアという1台。
僕はデザインも含めて大好きです。
②マセラティ~奥山清行氏がデザインした芸術品~
Ⅰ,『マセラティ・クアトロポルテ』(5代目)
Maserati / Quattroporte | |
エンジン | 4,244cc V8 |
ミッション | 6速AT |
最大出力 | 400㎰ / 7,000rpm |
最大トルク | 46.0kgm・f / 5,500rpm |
※セミATのスペックを記載
先代とは似ても似つかない5代目のマセラティ・クアトロポルテのデザインを手掛けたのはピニンファリーナの奥山清行氏です。
トップギアのジェレミー・クラークソンも美しいと称した1台。
「パナメーラが水死体で、水に突き落としたのはこいつ(クアトロポルテ)だ!」
と同氏が言っていたのが懐かしいです。
なぜかというとパナメーラのデザインをボロクソに言っており、黒塗りのクアトロポルテがまるでマフィアのようだと発したからです(笑)
エンジンのベースはF430と同じであり、マラネロの工場にて製造されているため、フェラーリと血を分けた親戚とも呼べるサルーンです。
それはクアトロポルテの甲高いサウンドにも色濃く表れており、実用的な4ドアフェラーリとも言えるでしょう。
只者ではない雰囲気を発している5代目のクアトロポルテ。
この車に乗っていると、
「デザインはピニンファリーナが手掛けたんだ」
と自慢できますね。
奥山清行氏が手掛けた作品の中でも、エンツォと並ぶほどの美しい車なのではないかと思います。
6代目のクアトロポルテのデザインが不評なこともあり、5代目クアトロポルテの後期型は中古車でも高額で取引されています。
それだけ5代目のクアトロポルテが美しかったこと、『ピニンファリーナ』という集団がいかに素晴らしい仕事をしたのかがはっきりと分かった一件です。
Ⅱ,『マセラティ・バードケージ 75th』
Maserati / Birdcage 75th | |
エンジン | 5,998cc V12 |
ミッション | 5速MT |
最大出力 | 700㎰ |
2005年に発表されたマセラティのコンセプトカーがマセラティ・バードケージは、奥山清行氏統括の下でデザインされました。
この車の最大の特徴は、ルーフとドアとボンネットが一体型になった今までに例を見ない斬新なレイアウトでしょう。
実際にこのような車が発売される日が来るのか。
そうなった場合は実用性の問題がありますが、面白い1台になりそうです。
ヘッドアップディスプレイを採用しており、2005年に登場したとは思えない技術も反映されており、2018年現在も色褪せないコンセプトカーですね。
車のヒストリーに関連する記事
[card2 id=”3812″ target=”_blank”]
参考:【歴代ポルシェ911】空冷から水冷への歴史の変遷を辿る!
フェラーリの日本人デザイナー『奥山清行』氏まとめ
奥山清行氏はすでにピニンファリーナを退社され、自身の会社を立ち上げています。
また、車だけでなく新幹線や東京メトロの車両など幅広い製品のデザインを手掛けているのです。
巨匠奥山清行氏に興味が出た方は是非奥山清行氏について色々と調べてみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。