今やエコカーを代名詞ともなった「ハイブリッドカー」
「ハイブリッドカー」とは、「車の動力が、(1)内燃機関と(2)電気モーターの2種類を組み合わせて動く車」の事を指します。
通常の内燃機関の自動車は「ガソリン」 or 「ディーゼルエンジン」のどちらかに分類されます。
「ガソリンエンジン」と「ディーゼルエンジン」の主な違いとしては、その着火方法にあます。簡単に説明すると、ガソリンエンジンには点火プラグがあり電気により火花を起こすのに対して、ディーゼルエンジンには点火プラグはなく、圧縮により着火する仕組みです。
稀に、初心者ドライバーが初めて給油する際に、「軽自動車だから軽油」を誤って給油するトラブルがあるが、ガソリンとディーゼルではそもそもエンジンの構造が異なるので、ガソリン車にディーゼルを給油しても全く始動する事はありません。
ちなみに余談ですが、ガソリンエンジンには、ハイオク仕様とレギュラー仕様に分類される「ハイオク」とはオクタン価が高いという意味です。「オクタン価」とは、ガソリンのエンジン内での自己着火のしにくさ、ノッキングの起こりにくさ(耐ノック性・アンチノック性)を示す数値の事であり、筆者の経験上、知っている人は車好きのごく少数となります。ノッキングとは、車内のガソリンが、車が意図しないタイミングで爆発を起こすことをいいます。つまりオクタン価の高い「ハイオク」は、こうした事象を防ぎやすいものとなっています。
ハイブリッドカーは内燃機関と電気モーターの組み合わせて動く車とお伝えしましたが、電気モーターを動かす為の専用の電池が必要であるハイブリッド用のバッテリーは、例えば、トヨタ自動車のプリウスやアクアといった自動車の場合、後部座席の座席下に設置されている事がほとんどなので、ハイブリッドカーの後部座席には、多くの自動車で排気用のダクトが設置されています。
ハイブリッドカーというのは、減速時の回生エネルギーを充電し、加速時に利用する事で燃費を抑える仕組みで、ガソリンエンジンの仕組み上、「エンジンの回転数が高い=ガソリンの消費量が高い」状態で、低燃費を達成する為には、極力回転数を抑えます。
筆者もアクアとCT200hを所有していましたが、その経験上から言って、ハイブリッドカーが真価を発揮するのはストップ&ゴーを繰り返す市街地での走行であり、高速道路の様に、高い回転数を維持して走行する必要がある場合は、思ったよりも燃費が伸びなかった記憶があります。
ハイブリッドカーの種類について
ハイブリッドカーは技術的に以下の4つに分類する事が可能であり、国内メーカごとにそれぞれ特徴が出ています。
(1)シリーズ方式
エンジンを発電用として使いその電力でモーターを駆動させる方式です。
発電した電気はバッテリーに蓄えられ、必要なときにエネルギーが放出されます。
走行時に使われるのはモーターのみであるため、エンジン音も小さく電気自動車に近い走行感覚となっています。
シリーズ方式の場合、エンジンは発電できる能力さえあれば十分なため、排気量、消費燃料ともに少なくて済み、低燃費化に有利なシステムとなっています。
筆者は、2年前に沖縄に観光で行った際に、e-POWERのノートに乗った事がありますが、回生ブレーキの制動が想像以上にきつかった記憶があリます。テレビのコマーシャルで宣伝して通りでブレーキを踏まなくても、アクセルを離せば車が止まりますが、私は最後まで慣れませんでしたが、好みもあると思いますので、興味ある方はお試ししてみてください。
代表的な車:日産 e-POWERノート、セレナ等
(2)スプリット方式
エンジン動力とモーター動力が合成され、走行状態に応じて2つの動力の割合を調整する方式です。
「動力を分割=スプリット」できることから、この名称となっています。スプリット方式の場合、エンジン動力を停止させてモーター動力単体でも走行する事が可能で、エンジンからの動力を駆動と充電の両方に分割させることも可能です。
代表的なシステムは「THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)」であり、プリウスやアクアに搭載されており、乗っている方も非常に多いと思います。筆者も初代アクアとCT200hの4年以上に乗っていました。
(3)パラレル方式
パラレル方式とは、エンジンに対して駆動モーターが並列の構造となっている方式です。
最もエネルギーを使う発進時や加速時などでモーターがエンジンをサポートし、燃費効率を改善しています。
他の方式と比べて構造が単純かつ軽量なので、小型のハイブリッド車に搭載されることが多い方式です。代表的な車種としては、ホンダのIMA(インテリジェント モーター アシスト)搭載のインサイトやシビックです。システムの考え方としては、モーターが常に作動しているので、エンジンのパワーを増大させるという意味においては、ターボ車に近い印象です。
代表的な車:ホンダ IMA インサイト、シビック
(4)マイルドハイブリッド
エンジンの始動とバッテリーの充電に使用する電気モーターを走行のアシストに利用するシステムで、スズキ車が積極的に採用しています。
1~3のハイブリッドシステムとは異なり、最小限のモーター出力で済む為、大きなバッテリーを搭載する必要がなく車体を軽量に出来る点も特徴の一つです。実際に、スペーシアに搭載されているリチウムイオンバッテリーの現物を見た事がありますが、助手席のシート下に収納されていて、ipad程度の大きさで、子供でも持てる位の重さでした。走行の全領域をカバーする訳ではないのですが、市街地の走行をメインとする軽自動車や小型車であれば、理にかなっており、スズキらしいコストを抑えた実用性の高いシステムだと思います。
「ハイブリッドカー」のメリット・デメリット・燃費は?
ハイブリッドカーのメリット
①燃費が良い
ハイブリッドカーのメリットは、燃費の高さに尽きます。
筆者はアクアとCT200hに計4年以上乗っていましたが、燃費が20㎞/lを割った事は一度も無かったです。特に、アクア(初代)は中古で購入したが、エアコンを使わない時期であれば平均燃費は27㎞/l前後で、アクアの前はマークXに乗っていましたが、毎月のガソリン代は本当に半分以下になり、財布の負担は激減しました。
②環境にやさしい
電気で走行している時はCO2の排出を抑えることができるため、環境面でのメリットがあげられます。 また、ハイブリッドカーの環境性能は国の基準値をクリアしているということで、購入時に減税や免税の対象となります。
③車両購入時に減税がある
エコカー減税とは、燃費や排ガス性能が高い対象自動車を購入し、新規登録を行った場合に自動車重量税の減税が受けられる特例制度のことです。
エコカー減税は2021年4月末までとなっていましたが、2021年度税制改正によって2年間の延長が決定されました。
エコカー減税とは燃費や排ガス性能が優れた自動車に対して、性能に応じて新車の初回車検などの自動車重量税の税率を減免する制度です。初回車検で免税となる自動車のうち、電気自動車等の極めて燃費水準が高い車は、2回目の車検時の自動車重量税も免除されます。
④エンジンが長持ちしやすい
通常のガソリン車と比べると、ハイブリッドはモーター駆動との併用で出力を出しているので、エンジンにかかる負担は軽減され、エンジンが長持ちしやすいと考えられています。
ハイブリッドカーのデメリット
①ハイブリッドバッテリーの劣化
ハイブリッドバッテリーは使用状況と経年劣化により、バッテリー自体の性能は劣化し続ける為、ハイブリッドカーに乗り続けるのであれば、いずれはバッテリーの交換は必須です。
バッテリーである以上、スマートフォンの電池と仕組みとしては大きな違いはなく、使用頻度が少なくても経年劣化により性能は悪化しますし、使用頻度が多ければ、その分だけ性能の劣化は進んでいきますので、留意は必要でしょう。
②環境によっては燃費が悪くなる場合もある
現在のハイブリッドカーは、速度が低い時点で燃費の効率が発揮されるものも多く、日本のように狭い道や信号での停車が多く、あまりスピードを出さない道路で燃費の良さを発揮するものが多いのが現状です。高速道路のように道幅が広く、スピードを出す道路ではガソリン車とハイブリッドカーの間で燃費の差があまり出ない可能性もあります。ハイブリッドカーを購入する際には、目的や車種の特徴を考慮し、自身の目的にあったものを選ぶようにしましょう。
③エンジン音好きには、走行音が無く、人によっては運転する楽しさが少なく感じる人も
私は車が好きな部類の人間というのもあり、これまでに普通の人以上に多くの車を乗り継いできましたが、そんな私からするとハイブリッドカーは燃費はいいものの、乗っていて楽しい車ではありませんでした。やはり車好きにとって、エンジン音がしない車、エンジンの回転数を感じられない車というのは退屈かもしれません。
しかし、運転時や始動時の静粛性もハイブリッドカーのメリットの部分でもあります。 例えば、閑静な住宅地に住んでいる人などは、特に早朝や夜間など、近隣の家にエンジン音が伝わってしまうと迷惑になってしまう事や自身が気になってしまう人もいるはずです。 その点、ハイブリッドカーの場合、セルモーターを回してエンジンに点火するわけではないので、ガソリン車に比べて大きな音は出ません!
一人一人感覚も異なり、好きなものも異なります。静寂性が好きな人、エンジン音を感じたい人、一番重要なのは当たり前ですが、自身の好きな車を選ぶ事です。ハイブリットカーやガソリン車など、様々な車を見て、比較し、自身の好みにあった見つけましょう!
筆者がおすすめする「ハイブリッドカー」はこれ!
筆者のオススメする「ハイブリッド車」をご紹介します。
スズキ スイフト(ハイブリッド)
私がスイフト推しの理由は、「コスパ」、「デザイン」、「車体の軽量化」の3点です。現行スイフトの新車価格は、ガソリン車とハイブリッドカー(マイルドハイブリッド)を同グレードのRSで比較した場合、税制優遇等を加味すると10万円程度しか差がありません。
トヨタ自動車であれば、ガソリン車とハイブリッド車で比較した場合、グレードによっては50万円近くの差がありますが、大きな差がないのは魅力です。
個人的な好みもありますが、スイフトのデザインはモデルチェンジの度に洗練されており、シャープさが際立つ印象です。加えて、車体重量は1,000㎏(ガソリン車)を下回っています。近年の自動車は、重く大きくなる傾向にありますが、軽い車というのは低燃費走行に寄与するので、そうした意味でも魅力が高いです。
トヨタ アクア(ハイブリッド)
アクアを第2位で選んだ理由は、「トヨタの造る自動車の信頼性の高さ」にあります。長期間所有するのであれば、故障修理の必要性が生じますが、販売台数が最も多いハイブリッドカーなので、中古部品も数多く流通しており安く修理する事が可能です。
また、ハイブリッドカーはリチウムイオンバッテリーの劣化により、長期間の所有であればハイブリッドバッテリーの交換が必要となります。販売台数が多いアクアであれば、保証付きのハイブリットバッテリーも流通しており、安価に長く所有する車だと言えます。
引用:トヨタ公式ホームページ
ホンダ VEZEL(ハイブリッド)
最後にVEZELです。
ハイブリッドカーのSUVという理由で選びました。同じクラスにトヨタのCH-Rがあります。両方の車を運転した事はあります。全ての質感においては、CH-Rの方が間違いなく高い印象ですが、CH-RとVEZELの後部座席を比較すると、CH-Rの方がかなり狭く窮屈な印象です。
私は3歳の長女、1歳の次女、妻の4人家族ですが、家族で出掛ける事を考慮すると後部座席の使い勝手というのは非常に重要です。
また中古車の流通台数も探しやすい点も魅力です。
燃費から選ぶ「おすすめハイブリッド車」はこれ!
こちらは、『e燃費アワード2021-2022』から、一部抜粋して、おすすめハイブリッド車を紹介させて頂きます。
『e燃費アワード2021-2022』総合部門 1位
トヨタ ヤリス
燃費ナンバーワンを決める総合部門1位に輝いたのは、昨年に引き続き『ヤリス(ハイブリッド)』(28.2km/L)。
2位は昨年同様に『プリウス』(24.5km/L)となりました。
新型ヤリスは2020年2月に発売されました。「ヤリス」という車名は日本国内で販売されてきた「ヴィッツ」の海外での車名です。新型ヤリスからグローバルで車名を統一し、世界共通の「ヤリス」という車名が採用されました。
燃費性能と出力性能を両立させた車の開発は難しいと言われていますが、新型ヤリスは、新プラットフォームTNGAによる軽量化と新開発エンジン「直列3気筒1.5Lダイナミックフォースエンジン」の採用により、高い燃費性能と出力性能を実現しており、初心者からベテランまで、幅広くドライバーを満足させてくれるでしょう。
引用:トヨタ公式ホームページ
『e燃費アワード2021-2022』新型車部門1位
トヨタカローラ クロス (ハイブリッド)
引用:トヨタ公式ホームページ
※2021年度(2021.01~2021.12)に発売された新型車の燃費から比較
SUVの『カローラクロス(ハイブリッド)』(21.4km/L)がトップ!
日常生活でメインに乗る方、アウトドアで活用したい方など、様々なシーンで満足できるSUV車。
カローラクロスのハイブリッド車は、走りの良さはもちろんの事、システム全体の効率化を図りCO2を低減。低燃費を達成しつつ、力強い加速性能も実現し、使い勝手の良さを損なわず高い走行性能を実現している車です。
このハイブリッド車には「電気式4WDシステムのE-Four」が設定されており、高い燃費性能を維持しつつ、雪道などでの走行安定性も高い車です。
『e燃費アワード2021-2022』ガソリン車部門1位
スズキ スイフト
引用:スズキ公式ホームページ
ガソリン車部門は昨年に引き続き『スイフト』(17.9km/L)が1位
走りの良いコンパクトカーとして評価が高く、さらに手頃な価格で手に入るスポーツモデルとして世界で支持されている車です。
『e燃費アワード2021-2022』軽自動車部門1位
ダイハツ ミライース
引用:ダイハツ公式ホームページ
「低燃費」「低価格」「省資源」を柱に開発され、「誰もが乗れるエコカー」として2011年9月にデビューしたダイハツのミライース
街中での走行に非常に使いやすく、燃費も良いクルマです。是非チェックしてみてください。
『e燃費アワード2021-2022』ハイブリッド部門1位
トヨタヤリス(ハイブリッド)
引用:トヨタ公式ホームページ
ハイブリッド車部門も総合部門と同様に1位『ヤリス(ハイブリッド)』(28.2km/L)となっています。
2位『プリウス』(24.5km/L)、3位『カローラスポーツ(ハイブリッド)』(23.9km/L)とトヨタ勢がトップを独占しています。
『e燃費アワード2021-2022』ディーゼル車部門1位
マツダMAZDA2 (ディーゼル)
引用:マツダ公式ホームページ
ディーゼル車部門部門も昨年に引き続き『MAZDA2(ディーゼル)』(20.4km/L)が1位となっています。国内唯一のディーゼルコンパクト車で、力強い走りを体感できる車です。
『e燃費アワード2021-2022』輸入車部門1位
プジョー308(ディーゼル)
「プジョー308」は、フランス製品としては珍しく万人受けにも思える抑制が効いたスタイルが特徴です。
フランスでは国民車として量産されているため、落ち着いたデザインになっています。
「プジョー308」の心臓部には、高い環境性能、燃費性能を誇る「クリーンディーゼルBlueHDi」と呼ばれる高性能ユニットが装備されています。アクセルを踏んだ瞬間に感じられる、圧倒的な加速とトルクが魅力でしょう。
車の燃費性能はどこを見れば良い?燃費の指標となる「WLTC」と「JC08モード」とは?
『WLTC』とは世界統一試験サイクル(World wide-harmonized Light vehicles Test Cycle)という車の燃費を測る国際的な試験方法を指します。
日本では2017年夏頃に導入され、2018年10月から発売される車種についてはWLTCモードでの燃費の表示が義務付けられました。今後は、WLTCモードに統一されていく予定です。
「WLTCモード」は「JC08モード」と比べると、平均速度と最高速度が大幅に上がり、暖機前スタート比率が上がり、積載重量が増え、走行距離が伸びるなど、より現実の走行モードに近い内容になっているのが特徴です。
WLTCモードは、市街地モード、郊外モード、高速道路モードという3つのモードで燃費の計測を行い、それぞれの燃費とそれらを総合したWLTCモード燃費を表示しています。
各モードの燃費と総合的な燃費がわかるので、より実際の走行に近い数値となっており、実際の燃費性能の目安をチェックできるのがメリットです。
まとめ
世界的な潮流は、EV化の方向にあるのは間違いありません。
しかしながら、EVの充電スタンド等のインフラ面が不足している事は否めません。筆者も自宅にEVの充電スタンドの設置を検討した事があり、業者に見積りを依頼した事がありましたが「最低でも10万円以上」との事で諦めました。
また、トヨタ自動車の豊田章男社長が指摘するように、日本の自動車が全てEVに移行した場合、国内の電力が不足する事は間違いありません。電力不足とインフラ面を考慮すれば、EV化の推進には大きな課題があるのは間違いありません。
遠い将来を考えれば、EV化への道は不可避である事は否定しませんが、現実的に考えれば、「ハイブリッドカー」が現実的な選択肢であると筆者は考えています。
記事執筆者
中村 傑 (Suguru Nakamura)
大垣共立銀行を退職後、東京海上日動火災保険に代理店研修生として入社。研修期間を経て、2015年に独立開業。2020年に株式会社として法人成り、現在に至る。家業が自動車販売業であり事業承継者でもある。車と保険の両方の業務を兼務しており、専門領域が広い事が強み。